園芸生産科学研究室

2025年度前半までの研究に関するトピックス

2年ほど更新が滞ってしまいましたが、研究関係でいくつかのトピックスがありました

まず今年度、3報の論文発表を行い、修了生の鈴木菜月さんが中心的に取り組んだ研究成果、および本研究室のトマトに関する研究成果をまとめた依頼総説が、園芸分野の国際学術誌「The Horticulture Journal」に掲載されました。

鈴木さんの論文では、タマネギの花芽分化や抽苔に関わるAcFT2遺伝子の発現について、附属農場で秋まき栽培した複数の品種で解析し、生育に伴ってどのような変化が見られるかを明らかにしました。また大きな苗ほど、AcFT2遺伝子の発現と抽苔の発生率が高いことを示し、苗が大きくなるほど抽苔が発生しやすいという現象を、遺伝子レベルで示しました。なお本研究に取り組んだ鈴木さんは、本学の修士課程を修了後も、タマネギの研究者としてご活躍されています。

本研究室のトマトに関する研究成果をまとめた依頼総説は、The Horticulture Journal誌 第94巻 4号の表紙に採用されました。

本研究室で取り組んでいる、トマトの染色体断片置換系統を用いた研究成果について解説していますので、興味のある方はご覧ください。

また修士2年生の宮﨑友里圭さんが中心的に取り組んでいる研究成果が、園芸分野の国際学術誌「Scientia Horticulturae」に掲載されました。Scientia Horticulturae誌は、園芸分野の学術雑誌を影響力(インパクトファクター)が高い順に並べたとき、最も高い上位25%にランクインする「Q1ジャーナル」に分類される、掲載へのハードルが非常に高い雑誌になります。

宮﨑さんは、タマネギの可食部(鱗茎)の「分球」に焦点を当てて研究を行っています。タマネギの分球は、鱗茎が内部で、あるいは外から見て2つ以上に分裂する現象のことを指します。見かけ上の品質や商品性を左右する現象である一方、なぜ分球が発生するかというメカニズムは解明されていません。そこで様々なタマネギ品種を附属農場で栽培し、分球の発生率を比較しました。その結果、早生品種とよばれる、播種や植え付けから収穫までの期間が短い品種では、分球の発生が少なく、一方で中生や晩生とよばれる収穫までの期間が長い品種では、分球が発生しやすいことを明らかにしました。また植物ホルモンのジベレリン(GA₃)を、生育中のタマネギに処理することで、分球の発生が促進されること、および鱗茎の形状が紡錘形になることを明らかにし、ジベレリンが鱗茎の分球と形状形成に重要な役割を果たすことを示しました。

論文発表に先立って3月に日本大学で行われた園芸学会令和7年度春季大会でも、宮﨑さんの研究発表は多くの参加者の方々から注目を集めていました(写真は一部加工しています)

また今年の9月に高知大学で開催された園芸学会令和7年度秋季大会では、修士2年の田部井彩華さんが若手優秀発表賞を受賞しました

発表題目は「トマトの近縁野生種に由来するSlKLP遺伝子を過剰発現させた形質転換体の解析」です。田部井さんは、現在市場に流通しているトマト(栽培品種)の祖先にあたる近縁野生種が持つ、有用な特徴や遺伝子に関する研究を進めています。本発表では、近縁野生種の第12染色体に存在する果実サイズを増大させる遺伝子(SlKLP遺伝子)を、トマトの栽培品種に遺伝子組換え技術を用いて導入し、果実に及ぼす影響を解析しました。その結果、SlKLP遺伝子は果皮の厚さを増加させることで、果実サイズ増大に寄与することを明らかにしました。

口頭発表と質疑応答を通じて、研究の新規性と将来性が高く評価され、今回の受賞に至りました。宇都宮大学から若手優秀発表賞の受賞は、田部井さんが初めてです。おめでとうございます!

このほかにも、2024年度には園芸学会秋季大会(琉球大学)、日本農業気象学会関東甲信越支部大会(宇都宮大学)、XIX International Solanaceae Conference(SOL2024、つくば国際会議場)で研究発表を行うともに、大学コンソーシアムとちぎ主催の「第21回学生&企業研究発表会」で大学院生の木内大空さんが「栃木県経営者協会賞」を、田部井彩華さんが「オニックスジャパン賞」を受賞するなど、本研究室の学生が活躍しています。園芸作物の研究に興味のある受験生や大学生の方、宇都宮大学農学部生物生産イノベーション科学科(あるいは大学院 地域創生科学研究科東京農工大学大学院 連合農学研究科)で一緒に研究しませんか?

なおこれまで本研究室のHPの更新は、研究室を主宰する池田が行ってきましたが、今後は研究室に所属する学生たちに更新をお願いする予定です。投稿頻度が増えると思うので、本研究室に興味をお持ちの方は、定期的にチェックしていただけると嬉しいです!

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