2024.02.22–23 大阪湾のマッコウクジラ

 2024年1月12日(?)に大阪湾内で目撃が相次いだマッコウクジラですが、2月に入っても湾にとどまっていました。おそらく衰弱していたために、穏やかな湾内にいたのでしょうが、そのまま衰弱死してしまいました。大阪湾では、昨年も同様のことが起きていて、昨年に死亡したクジラ(淀ちゃん)は海上投棄されました。今回は、大阪府知事や現場の方々の理解と協力のもと、骨格標本(←これ自体が貴重な研究試料です)の保存や研究サンプルの採取など、科学的な調査ができました。2024年2月22日〜23日にかけて、日本鯨類研究所が指揮のもと、大阪市立自然史博物館、国立科学博物館、その他学術機関のメンバーが集まり、調査を行いました。私達もその中に入れていただき、解体しながらサンプリング等を行いました。

 こういう調査は、得てしてドタバタ、過酷なんです…今回は、まず21日の午後9時に宇都宮を出発し、夜通し運転して、22日の午前5時半ごろ大阪に入りました。仮眠をとって、現場に向かいました。現場につくと、このときには眠さというものは無く(きっと、アドレナリンが出ているんでしょうね)、ワクワク感でいっぱいでした。しかし、22日はクジラを海から引き上げて移動するだけで終わってしまいました。「だけ」といってもスゴク大変なことです。何十トンもある動物をクレーンで吊ったことのある人はそうそういません。重機のオペレーターさんたちも初体験なわけです。そして、予想外のことが度々起こります。現場の方々には本当にお世話になりました。23日に解体開始、クジラの体の上に登って皮を切っていきます。そして脂皮と筋の間に刃を入れながら、皮を観音開きのようにして剥いでいきます。これが大変でした。皮が予想以上に硬くて、手間取りました。ただし、肋骨外しは思いのほか、スムーズに進みました。肋骨外しで、挽回した感じです。この間に、腹腔内臓器を調査、その後は頭部を胴体から切り離し、胸腔内臓器を調査して、なんとか最低限の調査を済ませたという感じでした。2日間とも小雨が降ったり止んだり、足元は泥まみれ、強い腐敗臭(←専門家は慣れていますが)、それに加えてトイレがないという状況(←フィールド調査ではよくあることです)で、全員が集中力を切らさずに、調査を進められたことがよかったと思います。経験はお金では買えない。ほんとうに楽しく学ばせていただきました。大型獣の解剖は体力仕事です。作業時は、アドレナリンも出ていて、また「私達がと、やるしかない」という感覚ですおりますので、あまり疲労を感じませんが、次の日は、体がバキバキです。それでも、せっかく大阪に来たのだからと、24日は少しだけ大阪を感じてから(通天閣を見て)、帰路につきました。

 ちなみに、解体の様子は、MBS NewsというYouTubeチャンネルで、ライブ配信されていました。興味のある人はこちらをどうぞ→ https://www.youtube.com/live/zOmXxCELBvI?app=desktop&si=5s-KhdrB1g2Py0Gp