愛媛大学沿岸環境科学センターに冷凍保存されている、小型鯨類を解剖しに出かけました。今回、うちの学生は金欠病のようで、参加しませんでしたが、スジイルカ3個体、コマッコウ2個体、ハナゴンドウ1個体を愛媛大学、長崎大学、岡山理科大学、北海道大学、国立科学博物館、その他個人参加の人たちで、解剖&サンプリングを行いました。
事前情報通り、腐敗した個体が多かったのですが(海岸に死亡漂着した個体なので、腐敗していることが多い)、腐敗が進行していることで観察できるものもありました。骨膜からきれいに剥がせるので、軟骨と硬骨の境界を観察できたり、筋の停止腱を簡単に剖出できたりと、収穫もありました。腐っているからと、舐めてはいけません。できることがたくさんあるのです。
コマッコウ(正確に言うと、コマッコウ属鯨類Kogia sp.)の幼獣は腐敗が顕著で、外貌からは種同定が困難でした。コマッコウ科Kogiidaeには、1属2種、コマッコウK. brevicepsとオガワコマッコウK. simaがいます。コマッコウのほうが成獣の体長が大きい、オガワコマッコウと比べて背びれが尾側に位置し、小さく低いなどの特徴がありますが、腐敗していたり、幼獣であったりすると、特徴が不明瞭なこともあります。頭骨の形態からは、K. brevicepsかな?というところでした。これから骨格標本にし、改めて種同定を行うことになります。骨にしてみないと、種がわからないことも多々あるのです。いつどこにどんな生物がいたのか、これを記録することが自然史研究の始まりですが、種が不明では何を記録しているのか分かりません。種同定は必ず行わなければなりません。種同定を確実にするためには、やはり死亡個体を標本とし、保存しておくことが必要です。標本を保存しておけば、あとから種を同定し直したり、分類が変わったときに、再分類したりできます。また、それ以外の研究にも活用できます。改めて、できるだけ標本を残したいなと思った調査でした。
余談ですが、愛媛県の松山城は山の上に天守閣があり、すごくかっこよかったです。
北側から見た松山城