スタッフ

講師 栗原望

 主に鯨類の形態、進化、分類について研究しています。鯨類は哺乳類です。哺乳類の体といえば、両生類から爬虫類、哺乳類と進化し、陸での生活に適応してきた結果としての産物です。水中と比べると重力の大きく働く陸上で、空気中の酸素を利用し、陸上を走る動物が哺乳類です。その哺乳類が海に還ってクジラとなりました。陸上仕様の体をどのようにして海仕様にしたのでしょうか?空気中に比べると、粘度の高い水の中で、透明度の低い水の中で、どのようにして高速遊泳しているのでしょうか?地理的に隔離されることが少ない海洋で、どのようにして種分化が起こったのでしょうか。様々な疑問が湧いてきます。鯨類とは、どうやら知的好奇心が掻き立てられる動物のようです。

 また、鯨類は農学部の扱う家畜(ウシ、ブタ、ヤギなど)とも近い系統関係にあります。鯨類を見ながら、家畜たちを見てみると、また新しい発見があります。逆に、家畜たちの普通を鯨類に当てはめてみると、おかしなこともあるでしょう。その「おかしなこと」を大切にし、追究していくことが、哺乳類全体、あるいは脊椎動物、生物全体を理解する第一歩だと思います。

 鯨類の研究をしてなにになるの?という人は多いかもしれません。しかし、例えば流体力学的に理にかなった鯨類の体の形を追究すれば、優れた船を造ることができるかもしれません。水圧に耐えうる機器を造ることにも役立つでしょう。また、センサーの開発にも役立つかもしれません。近年、様々な技術が開発され、私たちの生活は便利なものになってきています。そして、「ものづくり」を目的とした研究が注目を集めています。産業に直結するような科学がもてはやされる時代ではありますが、科学技術は、自然の模倣から始まっていることを忘れてはなりません。自然の営みを理解する基礎研究があるからこそ、新しい科学技術が生まれるのだと思います。

 動物の体は未知であるからこそ、発見する楽しみがあり、またその発見は、無限の可能性を秘めているのです。

 当研究室では、鯨類に限らず、脊椎動物全般を研究対象としています。メンバーそれぞれが、自分の興味に対して正直に行動し、知的欲求を満たし、知を蓄積していくことで、研究室全体として「格物致知」を目指します。

担当科目

学部:
動物機能形態学・生物学(細胞)・動物生産学概論・生物科学実験・アグリバイオサイエンス実験Ⅱ・フィールド実習Ⅱ

大学院:
動物形態学・博物学史