投稿者「作物栽培学研究室」のアーカイブ

マーカー利用選抜と代かき

田植え前の大仕事、マーカー利用選抜(MAS)と代かきの時期。
「遺伝子からフィールドまで・・・」というフレーズはよく見ますが、この時期は「PCRからトラクター」です。

まずはMAS。
今年は960個体が選抜対象。
4月に抽出したDNAについて、PCR〜電気泳動を繰り返し、遺伝子型解析を進めていきます。
解析の結果、狙った遺伝子型を有する個体をほぼ選抜できました。
とりあえずは一安心。

それと同時にトラクターで圃場の代かきを実施。
毎年水の溜まりが悪い本圃場ですが、今年はどうでしょう?

代かき1回目。
入水から5日後にまずは半分だけ縦方向へ水を広げ、2時間放置。
次に横方向へ水を広げ、1回目終了。約30%水が溜まる。
作業時間5時間。

代かき2回目。
横、縦の順で水を広げ、2回目終了。約50%水が溜まる。
作業時間1.5時間。

代かき3回目。
横方向に水を広げ、水が溜まった半分を荒代。
残り半分を縦、横の順で水を広げ、3回目終了。約80%水が溜まる。
作業時間5.5時間。

代かき4回目。
水が溜まった80%を荒代。
残りを縦、横方向で水を広げ、4回目終了。約95%水が溜まる。
作業時間6時間。

代かき5回目。
前回溜まっていなかった所を代かきし、全体を植代。
作業時間2時間。

5日かけて計20時間。
昨年より大幅増。
雨が少なく、乾燥していたことが影響したのか、かなりの長時間。
作業方法を見直す必要がありますね。

なんとか予定通りにMASと代かきが終わりました。
来週からはいよいよ田植えです。

        

出芽〜DNA抽出と圃場準備

今年は順調にイネの苗が育っています。

播種から1週間で9割以上が出芽。
安定した気温かそれともシルバーポリのおかげか、とにかく順調なスタート。
あとは様子を見ながら大事に育苗。
播種から2週間の様子だと問題なさそうです。

DNAマーカー選抜用の苗はグロスチャンバーで10日程経つとサンプリングできる状態。
1個体ずつ葉をチューブへ移し、DNA抽出へ。
これでマーカー選抜がいつでもできる状態が整いました。
あとは田植えの予定日までに遺伝子型の確認を実施するのみ。

育苗や選抜などのサンプルの準備と同時に圃場の準備も進めていきます。
まずは圃場の面積に合わせて基肥を撒く。
トラクターで表層を耕耘して、水が広がりやすくするため数周回ってタイヤ痕をつける。
そして入水開始。
毎年悩む本圃場の代かきがいよいよ始まります。

  

播種

4月になり、本年度の研究がスタートしました。

作物の研究は作物を育てなければできないということで、まずは苗づくりのための播種。
袋に入れた種子を消毒し、浸種した催芽種子をセルトレイなどに播きます。
今年セルトレの穴に1粒1粒播いた種子は計4132粒。
あとは田圃の試験区以外のスペース用に苗箱6枚分の播種。

使用しているガラス室は温度などの問題で発芽不良が起きやすい。
毎年対策を考えていますが、なかなか安定しません。
今年は基本に帰り、一般的に農家さんが使っているシルバーポリを使用。
太陽光の透過も多少あるし、プラ舟をしっかり覆うので保温・保湿は十分。
あとは春らしいポカポカ陽気を期待するのみです。

DNAマーカー選抜用のサンプルはスケジュール通りに2週間でDNA抽出できるサイズに育ってもらう必要があるので、今年もグロスチャンバーで育苗。

あとはDNA抽出〜マーカー選抜、そして田圃の施肥や代かき、最後に移植と、忙しい時期が近づいてますね。

  

春に向けて準備中

3月は春から始まる研究の準備。
今年行う実験を計画し、必要な材料、条件、期間などを確認。

確認が終えたら、準備開始。
まずは昨年選抜して採種した個体の遺伝子型確認。
DNAマーカーを細かく設定して染色体のどこからどこまでドナー由来の染色体断片が入っているか明確にします。

次に計画に合わせて播種する種子を準備。
実験に必要な個体数に合わせて種子を袋へ移していきます。
今年は8つの実験を計画しているので種子の種類が多いです。

種子の準備が終われば、今度は播種する場所の準備。
セルトレイに実験系統の種類を記して、粒状培土を8割ほど詰める。
ここまでしておけば播種当日の作業が楽になります。

準備の最後は圃場。
毎年行っている圃場内のゴミと石の撤去。
次に畦切りと穴埋め、高低差の補修作業。
そして春起こし。

あとは計画を再度確認し、修正を加えて4月からの本番へ挑むのみ。

あと最後の写真は今年の学生実験用のムギ類の生育状況。
11月の突然の雪や期間中の雨量など色々な悪条件を生き抜いたのはオオムギ半分以下、コムギ7割と厳しい状況。
気温の影響か、昨年と比べて生育も遅れています。
4月と5月の学生実験のサンプルとして使えるように大事に育てましょう。

        

ようやく成分分析終了?

2016年に採取したサンプルの成分分析がもう少しで終了。
ラストスパートと急ぎたいとことですが、最後に分析するのが最も手間のかかる構造性炭水化物。
昔からある方法を使って12月から前処理を開始し、余分な成分の除去や測定を経て、分析がようやく終わります。
実験自体が時間のかかることもありますが、毎回のガラス濾過器の洗浄と洗浄後の廃液処理が地味に大変です。

これが終われば2015年に実施した実験結果の再現性がようやく確認できます。
圃場等での作物研究では2〜3年かけて反復実験を行うことが一般的で、気象の変化で再現されない結果も出てきます。
研究を進める上で難しいところですが、コツコツと実験結果を積み上げて真実に近づくことを目指すのみ。
さて、今回の実験結果はどうなのでしょうか?

一方、本日は卒論発表会。
生物資源科学科では、取り組んできた研究についてパワポ1枚を使って1分間のフラッシュトークで説明し、その後ポスター発表する形式を取っています。
本学科ならではの植物、動物、微生物等の幅広い研究課題が紹介され、普段関わらない分野の研究が見れるのでなかなか面白いです。

 

年末の作業

2016年もあと4日。
12月末までにやるべきことは採種した種子の整理と大掃除。

今年も様々な実験用イネの種子を採種したので、各系統ごとに封筒に移して冷蔵保存します。
まずは種子を保管するスペースの問題から、過去に採種したもので不要なものを廃棄。
ここで間違えてしまうと大変なのでよく確認することが必要です。
大きな種子庫があればとりあえず取っておくことができるのですが・・・
あとは今年採種した種子を混ざったりしないように慎重に系統名が書かれた封筒へ。
この作業も間違えないように確認しながらの作業です。

種子が片付けば、あとはすべての実験をストップして大掃除へ。
作業室、居室、実験室の順で2日かけてしっかりと行います。
毎週掃除していても、普段はあまり掃除しない場所や気付かないところは汚れているので重点的に。
高いところから始めて、最後に床掃除して終了です。

全部屋の大掃除が終わると清々しい気分になりますね。

 

実験あるのみ

11月末から長々と続いた大学のネットワーク障害。
一時はインターネットも使えないし、長期にわたってメールは全く使えない。
この時代にこの様な事故は業務遂行上大きな問題になります。
ただ自分が学生だった頃にインターネットやメールが登場したことを考えると、あの時代はどの様に業務が進行していたのか、考えるきっかけにはなりました。

さて、ある意味外界と遮断させられていた期間、年内にやるべき室内での実験をひたすら実施。
収穫期までに採取した様々なサンプルの成分分析や収穫したコメの炊飯米試験など、やることが多々あります。

まずは成分分析。
基本的にサンプル粉砕して、抽出、そして測定という流れ。
測定する物質によって、濃縮が必要であったりと方法は異なりますが、本実験室で行っている測定では最後は分光光度計で吸光度を測ります。
今回、本年度スピードアップのために導入した分光光度計がかなり活躍。
やはり6セル測定やデータを電子ファイルにできる機能は便利です。

そして炊飯米試験。
収穫してから1ヶ月後のコメを炊飯し、一定温度に冷ましてから米粒の物理試験を実施します。
根気がいる実験ですが、今年のコメの質を数字で確認出来るのはいいですね。

一方で、学部4年生の卒論もようやく完成。
自分の研究テーマについて、まとめたり、考察したりと大学ならではの勉強がここにあります。
最後は製本して終了。
あとは発表会に向けての準備です。

慌ただしい時期ですが、着実に前進したいですね。

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圃場作業終了

11月になり、徐々に寒くなってきました。
圃場の実験も全て無事終わったので、あと一仕事。

まずは畑。
雑草の発生を減らすために縦横2回トラクターでよく耕す。
次に施肥して小畝を作り、来年度の学生実験用に小麦と大麦を播種。
最後に防鳥系を張って完成。

そして田圃。
今年も長くお世話になった田圃を秋起こし。
まずはトラクターを入れる前に恒例となった紐探し。
ロータリーに巻きつくので圃場に紐を放置するのは非常に迷惑。
それにもかかわらず毎年圃場にかなりの紐が放置されます。
1回では探しきれないので何回も圃場をウロウロ。
その結果、今年も結構な量の紐を回収・・・・・本当に迷惑ですね。
この後ようやく秋起こし。
稲わらなどを土へすき込んで春までに分解をしてもらいます。

全てが終わったら、今年もよく働いてくれたトラクターを洗車して今年の圃場作業が終了。
毎年のことですが、圃場が終わるとホッとしますね。

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収穫と撤去

10月の仕事。

圃場では収穫(サンプリング)や採種、そして実験を終えた試験区の撤去。
実験によって植物体や穂を必要分確保し、来年以降に使用するために各系統ごとに種を採る。
実験用の植物体はそのまま実験室で使用したり、一部を冷凍、乾燥して保存。
穂は2週間ほど乾燥させて、収量解析や食味関連形質の分析へ。
その一方で圃場のイネや支柱、そして紐やラベルを全て撤去していきます。

後期の開始に3年生が分属されるので、本研究室での最初の勉強は圃場作業についてになります。
圃場は重要な研究設備ですから、マナーも含めて正しい使用法などを知ることは大事。
このような基礎となるところをいい加減にしてしまうと研究や勉強などの「仕事の質」が悪くなります。

11月が近づくにつれて圃場実験が1つ1つ終了し、徐々に圃場からイネが減ってきました。
もう少しで今年の圃場作業も終わりますね。

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9月になりました

9月になり、コシヒカリ等の収穫まで3週間くらい。

この時期は台風発生が気になります。
大切なサンプルが台風に潰されてしまうと研究ができなくなることもあります。
そこで種取り用等の倒伏すると困るサンプルには倒伏防止の紐張りをしています。
今年植えたイネは出穂が1ヶ月くらい違うものがあるので、穂ばらみ期に入った系統から順に紐張りを実施。
そして本日、ようやく予定していた全ての系統に紐張りが終わりました。
これで台風の影響は避けれますが、より生産現場に近い条件で実験している試験区は倒伏防止策はとらないので台風や長雨に倒されないことを祈るしかありません。

実験室では強稈性の実験をしつつ、昨年収穫したコメの炊飯米物理試験を実施中。
収穫して10ヶ月経った古米で炊飯米の硬さや粘りにどのような変化が生じているか等、ここ数年地道にデータを取っています。
脱穀して未熟粒や被害粒等を取り除き、精米して炊飯したコメを1粒ずつ解析。
小規模で行っているので必要量の玄米サンプルを確保するだけでもかなりの手作業ですが、1粒ずつ50反復行う実験も大変です。

あと数週間でいよいよ収穫期。
実験室で行う実験以外に圃場で行う実験や採種と忙しくなります。
天候に恵まれることを期待して、しっかり準備していきましょう。

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