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春に向けた準備と学会

3月になり、少しずつ春が近づいてきましたので次年度に向けた準備を開始。

まずは研究計画を立てて、必要な種子を準備して袋に詰めます。
まだ検討中の計画もあるので、とりあえず考え得る計画に沿って全て準備。

続いて、圃場の準備。
この時期は例年畔切りと春起しを実施。
まずは圃場内に落ちているゴミを拾い、畦に沿ってスコップ作業。
圃場の角などは土が盛られている状態なので、なるべく均平になるように調整していきます。
この肉体労働を2時間ほど行い、最後にトラクターで春起し。
土に空気を入れ、有機物の分解を促すとと共に、圃場を平らに仕上げます。

そして最後に、準備した種子を播種するセルトレイにラベリングと粒状培土を詰めて播種・育苗を行うガラス室へ運び、全ての準備が完了。

3月末は日本作物学会で日本大学生物資源科学部湘南キャンパスへ。
今回の発表タイトルは「イネの低登熟性に関与する遺伝子座LPW4が収量性及び稈内NSC蓄積に与える影響」。
現在実施中である科研費の研究で、内容は発酵粗飼料用イネのための新たな特性として低登熟性の導入を提案し、実証試験結果の報告になります。
発酵粗飼料用イネでは籾の消化率の低さから短穂化という新たなコンセプトにより、穂への炭水化物蓄積を減らし、茎葉への炭水化物蓄積増加という目標で「たちすずか」といった新たな品種が育成されています。
しかし、この短穂化されたイネでは採種効率が下がるということが問題となっています。
そこで今回の発表では短穂化の代わりに低登熟化を導入し、採種に関しては実肥で登熟歩合を高めることを提案し、その試験結果を紹介しました。

ポスター発表時に質問して頂いた方々に感謝申し上げます。

2025年スタート

2025年になりましたが、2024年の実験がまだまだ残っています。
1〜2月のうちに残りの実験を実施。

まずは稈のリグニン含量測定。
今回もチオグリコール酸リグニン法により、72サンプルを分析。
工程を3分割して3日間の実験を2セット行い、完了。

続いて、今年度圃場で育成したQTLの導入系統の遺伝子型解析。
注文したプライマーについて、親系統と導入系統のDNAサンプルを使って遺伝子型を確認し、導入されたドナー由来の染色体断片のサイズを測定。

3つ目は異なる施肥条件で栽培したイネの止葉葉身に含まれる窒素含量測定。
改良デュマ法による分析のため、粉砕したサンプルをスズ箔に包み、測定装置でガス化して窒素を測定。
装置の安定に手こずりましたが、無事分析完了。

最後は玄米に含まれるタンパク質含量をLowry法を用いて測定。
こちらはコメの品質確認のための実験で、食味試験サンプルなどを対象に実施。

これらの実験を実施しながら、卒論・修論発表会対応、春の学会に向けたデータ整理と要旨・ポスター作成も同時に行い、なかなか忙しい2ヶ月でした。

あとは収量特性の解析が少し残っているのでこちらを対応し、次年度に向けた計画と準備を始めていきます。

上位部稈の物理強度に関与するQTLについての新たな論文が公開されました

本研究室で行ったイネの倒伏抵抗性に関する研究の論文「Development of a near-isogenic line with a quantitative trait locus for the physical strength of the upper culm, BSUC11, and field evaluation of lodging resistance in rice」が植物育種の国際誌「Euphytica」に受理されました。

内容は、これまでに発表した上位部稈の物理強度に関与するQTLである「BSUC11」についてその実用性を評価するために、関与する染色体領域を狭めて近似同質遺伝子系統を育成し、機能解析と圃場試験から倒伏抵抗性や収量性を調べた結果を述べています。(図を参照)

既にオンラインで公開されています(DOI 10.1007/s10681-025-03470-2)ので興味のある方は読んで頂ければ幸いです。

年末までに実験と大掃除

11月と12月。
年末までにやるべきことは、実験と大掃除。

まずは実験。
サンプリングして乾燥・粉砕したイネの稈について、非構造性・構造性炭水化物含量の測定を実施。
1.5mLチューブにサンプルを入れ、可溶性と不可溶性で分けて、最後は酵素法によりデンプン、ショ糖、単糖類を分光光度計で測定。

続いて、三角フラスコにサンプルを入れ、水、亜塩素酸ナトリウム、酢酸を加えて80℃で加温。
氷で冷ましてガラスファイルターで濾過して乾燥させ、残ったものの重さからホロセルロース含量を測定。
さらに水酸化ナトリウムで分解して、ガラスフィルターで濾過して乾燥、残った重さからヘミセルロースとα-セルロース含量を測定。
こちらについては年明けも続けて実施していきます。

一方で秋に採種したサンプルを整理して冷蔵庫で保管。
種の種類が年々増えているのでリストも更新して記録しておきます。

昨年から講義でお米の食味官能試験を行っているので、忙しい合間にご飯を炊いて食味試験を実施。
コシヒカリと改良されたコシヒカリの食味の違いを見極めてもらい、お米の食味について考えてもらいました。

最後に恒例の大掃除。
実験室、居室、作業室の細かい部分まで掃除して、最後は床を磨いて終了。
今年の汚れをしっかり落として、すっきりとした部屋になりました。

今年も色々ありましたが、無事に終わりました。
年明け早々、実験の続きや別の測定もありますが、とりあえず一旦お休みです。

お米の調整と秋起こし

10月前半はまだまだ夏日のような気温でしたが、後半になって秋らしくなってきました。

この時期、実験室では研究や講義で使う食味試験用のお米の脱穀、調整、精米、そして真空パックを実施。
脱穀機で籾殻を除去後、未熟米や被害粒などをふるいにかけたり手作業で取り除きます。
綺麗な玄米を精米機で白米にして、試験用に1合あるいは2合ずつ真空パックして作業完了。
今年の食味はどうなのか?官能試験や物理試験で確認していきます。

一方、収穫を終えた田んぼはイネや支柱などを撤去。
その後はトラクターで秋起こし。
最後にお世話になったトラクターを洗車して、今年の外作業が終了。

圃場作業が終わり少し寂しくなりますが、これからは実験室での実験が多々あるので、粛々と実施してデータを積み上げて行きます。

収穫期になりました

9月上旬より、試験対象となる様々なイネ系統の収穫期が3週間続きます。
しかし、昨年と同じくこの時期に猛暑です。
猛暑に負けず、この時期の実験とサンプリングを実施。

まずは倒伏抵抗性の試験。
圃場では倒伏程度や押し倒し抵抗を測定。
さらに圃場よりサンプリングした個体を実験室へ移し、稈の形態や物理特性について実験。

つづいて、収量・品質調査のための穂のサンプリング。
個体別、あるいはバルクで収穫したサンプルを袋詰めし、室内で2週間ほど乾燥させます。

これらの作業がほぼ終わった9月末にようやく涼しくなってきました。
あとは来年に向けて採種して、圃場のかたづけを進めます。
来月からは実験室内での色々な実験が始まるので、まだまだ忙しいですね。

イネの実験と防鳥かかしくん

8月になり、イネの実験が色々と忙しくなってきました。

まずは出穂期施肥(実肥)の試験区に追肥を実施。
均等に施肥するため区分けして行い、その後の効き具合をSPAD計で確認します。
さらに出穂期の稈内炭水化物含量測定のためのサンプリングも実施。
圃場から植物体を持ち帰り、実験室で稈のみ回収して乾燥機へ。
乾燥後は乾物重の測定を行い、粉砕してチューブへ移し、成分分析を行うまでデシケーター内で保管します。

実験とは別に水田圃場の維持管理も継続中。
今年も猛暑の中、除草や倒伏防止の紐張りなど、作業を実施。
近年、スズメなどによる鳥害が増えているので新たな助っ人を導入。
簡易的な「かかし」を準備していたので、ついに本田へ設置です。
これで少しでも警戒されて鳥の害が減ることを祈ります。
既に出穂が早い系統では鳥害が起きているので、そこにはいつもとは異なる防鳥糸を設置。
今後は種取り用のイネに網をかけるなど対策しながら収穫期まで維持していきます。

今年も猛暑ですが、圃場の維持管理と実験を地道に進めていきましょう!

大急ぎで鳥害対策

7月になり、猛暑日がちらほらと出てきました。

田んぼでは出穂の早い系統が実り始めています。
これに合わせてスズメによる鳥害が早くも発生。
そのようなわけで急いで鳥害対策を開始。

支柱を田んぼに432本立てて、防鳥糸を設置。
ついでに倒伏が問題となる区には倒伏防止用の紐張りも開始。

とりあえず被害があったのは試験区ではなく、採種用の系統だったので助かりました。
被害のあった系統には二重で対策して、なんとか種が採れるように管理します。

30℃を超える中の作業が続きましたが、無事に設置完了。
あとは出穂に合わせて倒伏防止用の紐張りを継続。
防鳥糸による鳥害対策効果は十分ではないので、状況をみて別の対策も準備しておきます。

圃場管理とサンプルのダブルチェック

6月に入り、イネの分げつが徐々に増えてきました。
収穫期まで無事に育つように、日々イネの状況を確認しつつ、必要な管理を実施。

まずは、除草剤と殺虫剤。
試験区の面積を確認して必要量を準備し、移植から1週間後に除草剤、その1週間後に殺虫剤を散布。
そのあとは手作業による除草を行いつつ、害虫・病気の発生状況を確認していきます。

次はDNAマーカー選抜により選ばれた個体の遺伝子型を圃場の個体からサンプリングして確認。
水田圃場に入り、葉の一部をチューブに移し、DNA抽出。
PCR後に複数マーカーの遺伝子型を電気泳動後のバンドを見ていきます。

一方で特別研究員の研究も進行中。
水田圃場より採取した植物の根に含まれる菌を分離培養し、有用と考えられるものを選抜。
これと同時にイネへの接種実験をグロスチャンバーで予備的に開始。
異なる分野を含むために研究環境整備から始めたこちらの研究も、徐々に軌道に乗ってきました。

さて、来月は猛暑・酷暑の中での圃場作業を実施し、後半にはイネの出穂時期になるので生育調査や実験も始まります。
これから徐々に忙しくなるので、体調管理が大事ですね。

ひたすら田んぼ作業

5月。
気温が高い日もあり、苗が例年よりも早く育ってます。

まずは田んぼの準備として代かき作業。

1日目 3時間
2日目 4.5時間
3日目 4.5時間
4日目 8.5時間
合計 20.5時間

3日目までに十分に水が入らず、4日目は大変な作業になりましたが、なんとか無事に終了。

代かきの次は移植。
今年は8つの試験区に4758個体、空きスペースに1190個体を移植。
晴れの日、雨の日、肌寒い日、夏日の中、ひたすら手植えして7日間(25時間)で完了。

今月はほとんど田んぼ作業となりましたが、やっと一段落。
途中、畑で神山研究室の防鳥網張りを実施したりと色々他の作業もあったので、1ヶ月ほぼ肉体労働。
来週から除草剤や殺虫剤散布などの管理作業が始まりますので、少し体を休めておきましょう。