投稿者「作物栽培学研究室」のアーカイブ

収穫

猛暑続きの夏が終わり、涼しい季節になってきました。
圃場のイネも完熟期に入り、いよいよ収穫シーズンです。

収穫期の作業は主にサンプリング、実験、採種。
今年は後日行う実験用のサンプリングと採種が多く、収穫期の実験は少なめ。
この時期は台風や長雨で予定通り進まないのが難しいところです。
日々天気予報を確認しながら日程調整しつつ、作業を進めていきます。

今年は猛烈な台風や豪雨にも耐えてほとんど倒伏していないのはいいのですが、晴れの日が続かず、田圃がぬかるんでいます。
やや悪条件下の作業でしたが、なんとか予定通りにサンプリングと採種を終了。
今年も部屋の中に大量の稲穂がやってきました。
こちらは2週間ほど乾燥させてから収量解析、炊飯米試験、玄米成分解析、種の整理を行います。

収穫期の実験は植物体を実験室に持ち帰って行う物理試験や形態調査。
植物体から丁寧に稈を採取して、その物理特性や形態特性を解析します。
こちらも予定通りに実施できました。

圃場での作業も晩生品種の採種と片付けのみとなりました。
収穫シーズンのピークをなんとか無事乗り越えたので一安心ですね。

     

論文が受理されました

本研究室で行ったコメの食味に関する研究の論文「Identification and characteristics of quantitative trait locus for grain protein content, TGP12, in rice (Oryza sativa L.)」が植物育種の国際誌「Euphytica」に受理されました。

内容は、コメの食味に関与する玄米成分であるタンパク質とアミロース含量を制御するQTLが炊飯米物理特性にどのような影響を及ぼすのか、QTL解析から炊飯米物理試験結果について述べています。(図を参照)

本研究は学生と協力して一から始めて行った内容です。既にオンラインで公開されています(DOI 10.1007/s10681-018-2249-5)ので興味のある方は読んで頂ければ幸いです。

異常に早い今年の出穂

今年の夏はこれまでにない程の猛暑。
この影響か、イネもこれまでにない早さで出穂してきました。
本圃場でコシヒカリが7月中に出穂したのは初めてです。

この時期は田圃を日々チェックして、出穂しそうな系統から倒伏防止用の紐張り。
朝9時にはすでに気温も30度以上。
熱中症を避けるため、作業時間を2時間までとして紐張りを実施。
今年はさらにイネツトムシが多く発生しているので、その対応もついでに行います。

例年よりも1週間ほど早い出穂のため、これから実施する実験予定が1週間ズレてきます。
こちらの準備も早く対応しなくてはいけません。
さて、今年の出穂時期の変化が実験結果に影響するか、しないか、どうなるのでしょう?

  

出穂期の前に

7月に入り、猛暑日が続いております。

田んぼで除草しながらイネを観察すると、止葉が出てる系統やすでに穂ばらみ期に入った系統を確認。
暑いですが、そろそろ支柱立てと防鳥糸を張る時期の様です。

まずは支柱立て。
今年は昨年を上回る322本。
年々増えている気がしますが、大事な作業なので地道に実施。
暑いので2日に分けて行い、今年手にできたまめの数は9個。
なかなかの重労働です。

支柱立てが終わったら、防鳥糸を出穂が近い系統や栽培試験区に設置。
あとは出穂確認を行いながら引き続き防鳥糸の設置と倒伏防止の紐張りをしていきます。

出穂期になると色々実験も始まるので、これから忙しくなります。
とりあえず猛暑日が減ることを期待しましょう。

  

6月の田んぼ

田植えが終わり、少し気が楽になる6月。
でもやることは色々あります。

まずは除草剤と殺虫剤の散布。
この時期の前半はイネミズゾウムシやドロオイムシに注意。
そして後半にはイネツトムシが登場。
どちらも被害にあわないように移植後も定期的に田んぼを観察して、先手先手に対応。

そして重要なのは、DNAマーカー選抜で選ばれた苗が正しく移植されているか、毎年やってるこの確認です。
今年は田んぼに移植している68株から葉をサンプリングして、DNA抽出、そして遺伝子型解析を実施。

これが終われば次は田んぼと畦の除草、そして来月には支柱立てや防鳥糸の設置が待ってます。
今年も暑そうなので体調管理をしっかりとしましょう。

  

多忙な1ヶ月

4月末から5月後半までは多忙な1ヶ月。
田植えのデットラインを決めているので、それまでに田んぼを作り、DNAマーカー選抜を終わらせないといけません。

まずはマーカー選抜。
本年度の研究計画に従い、1152個体についてそれぞれ2マーカーで遺伝子型を確認。
機器トラブルなど問題が起きましたが、なんとか12日間で終了。

同時に田んぼ作り。
毎年悩む代かき作業ですが、今年は雨がよく降ったおかげで少しだけ楽でした。

代かき1回目。
3時間半の作業で30%くらい水が入る。

代かき2回目。
3時間半の作業で60%くらいまで水が溜まる。

代かき3回目。
荒代を含む6時間の作業で90%水が溜まる。

代かき4回目。
端などの水が溜まっていないところを調整して、植代して均平板で整える作業を3時間。

今年は4日間、計16時間で昨年よりは少し短時間で田んぼが完成。

そして最後に田植え。
今年の田植えは 8m × 48m の試験区を4日間、17時間かけて実施。
今年は9つの実験と種子の更新に対して、108系統、2400個体。
そして空きスペースに2050個体を移植。

なんとか計画通りに1ヶ月を乗り切りました。
後は除草や農薬散布などでとりあえず管理です。

        

4月の予定を順調に進行中

播種から10日。
グロスチャンバー内の苗がDNA抽出できる大きさになりました。
今年は1152個体のDNA抽出。
苗から1個体ずつ間違えないように葉をサンプリング。
今回抽出したDNAを使って来週からいよいよマーカー利用選抜が始まります。

ガラス室の苗も順調に育っています。
暑すぎる日もあるので温度調整しつつ、5月後半の田植えまで大事に育苗。

一方で、田んぼの準備も始まりました。
施肥し、浅耕して入水開始。
こちらも来週から代かきが始まります。
水が溜まりにくい田んぼですので、これから大変です。

学生実験用のムギは高めの気温のおかげでいつも以上に元気に生育しています。
とりあえず、倒伏防止と鳥害防止、そして殺虫剤散布を実施。
若干、過繁茂気味で出穂も早い今年のムギ。
授業予定日まで使える状態であればいいのですが・・・

これから1ヶ月でDNAマーカー利用選抜、代かき、そして田植え。
忙しいシーズンがやってきましたね。

     

種まき完了

4月に入り、今年の研究がスタート。

例年通り、まずは播種です。
種子を消毒し、3日ほど浸種。
催芽した種子をセルトレイに1粒ずつ播種。
今年は昨年よりも多い4612粒。

マーカー利用選抜用のセルトレイはグロスチャンバーで育成。
他のセルトレイはガラス室でシルバーポリを被せて出芽を待ちます。
さらに、田んぼの空きスペースなどに使用するイネ用に苗箱で6枚分播種しました。

記録を確認すると、今年はこれまでで最大量の播種になりました。
今年の4月は暖かい日が多い感じなので問題なく育苗できるでしょう。

  

準備中

3月に入り、春が近づいてきました。
まだまだ寒い日もありますが、今年のイネ研究のための準備開始です。

まずは計画。
昨年の結果などを確認し、実施する実験を考える。
現在継続中の研究課題で必要な規模などを見積もります。
あと種子の更新が必要な材料がないかもチェック。
圃場での実験場所や配置をある程度決めておきます。

次に播種の準備。
圃場に移植するイネの種子を必要量パッキング。
育苗に使うセルトレイや苗箱に播種する系統名などを記入。
播種時の作業効率のため、セルトレには育苗用培土を入れておく。

圃場の準備。
昨年秋起こし後、放置している圃場。
ゴミ拾いなどをしながら圃場の状態を確認。
スコップで地道に畦切りを行い、畦を修復。
高低差がひどい箇所は土を移動させ、なるべく均平にする。
最後にトラクターで春起こしして、分解されていない稲わらもすき込む。

とりあえず、予定している準備は完了。
4月に入るとすぐに播種時期がやってきますので、それまでに再度計画を確認しておきます。

あと、今年の学生実験用ムギの状態は良好。
昨年は半分程度しか生存していなかったので一安心。
害虫などをチェックしながら大事に育てましょう。

     

燃焼式(改良デュマ法)窒素/タンパク分析装置の立ち上げ

卒論発表会や予定していた実験が無事に終り、やっと一息つけます。
ただ、来年度の研究は3月から始まるのでそれまでにやり残していることをやらないといけません。

その一つが昨年11月に導入した窒素/タンパク分析装置の立ち上げ。
一度デモを見て説明書を読んでいたので使用のイメージはできているのですが、やはり実際に装置を動かしてみないと細かいところまで把握できません。

まずは標準物質を測定して使用法や精度を確認。
そして実際にサンプルを測定。
今回は玄米と葉を試し、サンプル量、測定誤差、分析時間など色々検証。

本装置では、均一になるように粉砕したサンプルをスズ箔に包み、燃焼して得られた窒素ガスをTCD検出器で測定します。
スズ箔で包んだサンプルをオートサンプラーにセットして、あとは制御ソフトウェア上でサンプル情報や測定条件を入力して多検体を自動で分析。
メンテナンスなどの維持管理をしっかりやっていれば、非常に簡便で精度の高い実験機器です。

1週間かけて色々試行し、得た情報をまとめてマニュアルを作成して完了。
あとは実際に研究活動に有効利用していくだけですね。